2016年9月10日土曜日

草を刈る、という単純な観光政策

いつも気にはなっているが、特に夏には気になることがある。

景観のよいところにはびこる、雑木や雑草だ。

この写真は、南さつま市イチオシの観光ルート「南さつま海道八景」の最初の展望所「高崎山展望所」の眺めである。

ここは、(当たり前だが)昔から眺めのよいところで藩政時代には魚見櫓(うおみやぐら)という見張り番がおかれていたほど、高い位置から縹渺と広がる東シナ海を見下ろせる雄大な絶景の地である。

でも、展望所のすぐ前にある雑木と雑草のせいで、その絶景の価値はかなり殺がれてしまっていると言わざるをえない。そしてこういう残念な場所は、高崎山に限らない。

確かに「南さつま海道八景」は、南さつまの自画自賛ではなくて、本当に素晴らしい名勝の地揃いだ。まだ見たことがない人は、一度ドライブしてみたらいい。鹿児島に、こんな圧倒的な景観の続く場所があったのかと驚くはずだ。国道226号線の、高崎山から耳取峠までがそれに当たる。

海側に広がる絶景、また絶景——。ここは日本屈指の眺望を持つ道路だと誇ってよい。

おそらくこれが南さつま市最大の「観光資源」で、事実自転車レースの「ツール・ド・南さつま」やウォーキングイベントの「鑑真の道歩き」といった各種の催しが開催されるなど、行政もこの道の売り出しに頑張っている。

だが、そういうイベントには予算を掛ける一方で、肝心の眺望の維持にはさほど関心がないようである。除草作業をやっていないわけではない。時々は、草払いはされてもいる(雑木の除去はやっているのかいないのかよくわからないが……)。でも私の目から見たら十分ではない。特に夏季には、南薩の雑草の勢いは怖ろしいほどになる。草払いしても、2週間後にはまた伸びてくる。相当頻繁に除草作業をしなくてはならない。でもそれが、ここへ来てくれた人への一番大事な「おもてなし」なんじゃないかと思う。

観光政策というと、最近はいろいろな手法が開発されていて、アニメとの連携とか道の駅の活性化とか、一昔前の観光政策には全然出てこなかったような新しい発想による取組が実際に成功してきている。もちろん、そういうものにも積極的に取り組んでいい。しかし観光の要(かなめ)の価値、ここでは「風景の価値」をしっかりと守り、高める努力をするというのが最も重要な観光政策だと私は思う。別にこれといったことをしなくても、「南さつま海道八景」を訪れた人が、しっかりとその風景を堪能できるように草払いを頻繁化する、それだけで立派な観光政策だ。

もちろん、雑木の除去とか草払いといったものは、簡単そうに見えていろいろ難しいことがある。道沿いの土地が公有地とは限らない。私有地の方が多い。地権者にいちいち許可を得ないといけないし(その上不在地主も多い)、土地の管理は地権者が行うべきものだから、それを行政が代わって行うことの是非もある。

また、私は地元大浦の亀ヶ丘にある「星降る丘展望台」というところの雑木を大胆に伐採して眺望を改善してもらいたいと思っているが、これは坊野間県立自然公園の一部で保護区域なので、たとえ雑木でも伐採には県の許可がいる。でも、そういう許可を地道に取って徐々に伐採を進めることこそ、真面目な観光政策だろう。

このくらいのことは、別に私が声高に求めなくても市役所の担当者は分かっているだろう。でも観光交流課というのは、イベントに次ぐイベントに駆り出され、席の温まる暇もないほどである。こういう地味なことは、ついつい後回しになっていくのが世の常だ。だからこそ、市民の声として言い続けていきたい。つい先日も観光交流課に行って、直接要望してきたところである。

草を刈るなんて単純なことだが、大事なことはいつも単純だ。せっかく来てくれた人が、雑草に邪魔されずに素晴らしい風景を堪能できること。道にゴミが落ちていないこと。街が清潔であること! 結局、観光というのは美しいものに触れるためにやってくるのだから、街も自然も、美しくあらねばならない。そしてそれは観光客だけでなく、現に今ここに住んでいる私たちの生活の質をも向上させる。真の観光政策は、観光客のためだけでなく、住民の暮らしをもよくしていくものであると思う。

2 件のコメント:

  1. 窪さん、全く同感(^O^)/お金もかけずに最大の効果があると思います。


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    1. イチローさん、ご賛同いただけて嬉しいです! 笠沙緑建は観光政策のカゲの主役ですね(笑)

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