2016年7月1日金曜日

自民・公明か、それ以外か

(前回からのつづき)

一方、今回の鹿児島の参院選は、どちらに投票すべきかそれほど明らかではない。

というのは、現在の国政は徹底的に政党政治が(悪い意味で)貫かれていて、誰が当選するかというのはさして問題ではなく(もちろん党首が落選するとかは大きいことだが)、結局は議席数のみがものをいう世界である。要するに、「人」よりも「党」を選ぶのが国政選挙である。

今回、鹿児島で立候補している4人を見ると、自民党1人、幸福実現党1人、無所属2人であり、「党を選ぶ」という観点では、実質的には野村 哲郎(自)と下町 和三(民・共・社の推薦=野党統一候補)の2択だろう。

でも野党統一候補、といっても、実際の国政における位置づけが明らかでないのが問題である。当選後にどこかの党に所属するのか、それとも当選後も無所属という不利な立場で活動するのか…。位置づけの如何によっては、大した活動ができない可能性もある。野党統一候補というものを作ったまではよかったが、であれば野党としての共通の(アンチ自民だけでない)価値観をつくるべきだった。でも一方で「自民党以外」という選択肢を用意するだけでも精一杯だったのだろうとも思う。それが現在の野党の限界なのかもしれない。

というわけで、鹿児島だけに限ったことではないが、今回の選挙は「自民・公明か、それ以外か」を問う選挙である。そして私なら、「それ以外」を選ぶ。

最近の自公政権は、かつてのそれとは随分違ったものになってきている。最も強調しなければならないのは改憲の動きである。自民党の出している改憲案を見ると、あからさまに個人の自由や権利を制限し、公の秩序を優先する考えが見て取れる。かつての自民党だったら、こういう方向性を打ち出したかどうか…。もはや自民党は「保守派」ではない。

派閥政治華やかなりし頃の自民党は、内部で百家争鳴ある政党だったので、このような草案がまとまることはなかったと思う。それが最近、急に自民党が一枚岩化してきて、異論を言うのは古い自民党の生き残りのような人たちだけになってしまった。公明党も、長く政権のバランサーとして自民党の独走を抑制する役割を果たしてきたと思うが、最近は軽減税率の導入を強く主張するなど、目先の点数稼ぎに走っている感がある。

私は自民党政権時代に霞ヶ関で働いていたし、元々アンチ自民ではないが、最近の自公政権の動きは不気味すぎてついて行けないと感じる。自民党・公明党のためにも、このあたりで一度立ち止まって考えた方がよい。

かといって、野党に国政を任せられるだけの甲斐性があるのかというとこれも心許ない。人材は少ないし、政策面も薄弱である。とはいっても、今回は政権交代を問う選挙ではないので、とりあえず自公政権を掣肘する意味合いで野党には頑張って欲しい。

と同時に、いつまでも「アンチ自民」だけでは成り立たないということは、民主党政権の時にみんなが痛感していることだ。野党は今後、これまでの利害得失を乗り越えて共通の価値観を作り、それに賛同できないものは去って、新たな力をまとめていく必要があるだろう(今回の選挙の結果如何に関わらず)。

……というわけで、与党にも野党にも上から目線で論評してきたが、じゃあお前はどんな政策を望むのか、という人もいるだろう。

なので、今回の選挙とは直接関係しないこともあるが、この機会に国政に関して普段思っていることを書いてみたい。選挙でもないと、国政について語るということもないので。

……

まず現在の日本が直面している大問題は、内政面では財政再建経済成長、そして少子高齢化である。

現政権は、財政再建のために増税を予定している。野党はこれに反対しつつも、「財政再建のためにはしょうがないのかな」という感覚も持っているように思われる。しかし歴史的にも、増税のみによって財政再建を成し遂げた国はないと思う。ある程度の増税は必要だとしても、財政再建に必須なのは歳出の抑制である。要するに赤字経営のさなかでの大盤振る舞いを辞めなくてはならない。

そして、最も大きな歳出抑制が必要なのは社会保障関係費である。単純に言えば、例えば年金の減額をする必要がある。ただでさえ年金というのは世代間不公平の温床になっていて、だいたい1955年生まれより上の世代は得をして、その下からは損をする(支払い額より受給額が少なくなる)という構造になっている。まずこれを是正する必要がある。年金制度の実質的な破綻は明らかなので、早いうちに改革した方が傷も小さくなる(厚労省は「年金は破綻しない」と言っているが、要するに給付額をどんどん少なくしていけば破綻しないというだけの話で、それは実際には破綻だと思う)。

さらに医療・福祉(介護保険等)にもメスを入れる必要がある。国民皆保険などのこれまでの日本の医療制度は大変優れたものであったと思うが、もはやそれを維持する余裕はなくなってくるので、患者負担の割合を高めるといった改革(改悪?)を行わなくてはならないだろう。でも最初は一律に負担割合を増やすのではなく、例えば平均入院日数の縮減のような取組が先だ。入院は医療行為の他にホテル的な費用がかかるので医療費の増加への寄与が大きいし、入院日数の縮減は患者の利益にもなる。しかし入院日数を短く抑えようとすると、結局は病床数の削減をしなくてはならない。こうなってくると話が難しいが、難しい話を避けてやりやすい負担割合の増加をやるよりも、業界と向き合った改革が必要だと思う。それには、中医協(中央社会保険医療協議会)の改革というような、地味で難しい課題に取り組まないといけないかもしれない。

しかし、年金を減らして、医療・福祉を改悪するとすれば、このようなことを掲げる政党はとても議席を取れそうではない。これらは特に高齢者層にウケが悪い政策で、彼らの票は非常に大きいし、高齢者でなくても反対する人は多そうだ。だが(政治家は誰も言わないが)こういったことをしなければ財政再建ができないのは明白なのである。よって、「民主制度下においては、財政再建はできない」と言う人すらいる。財政再建を行うために必要な政策は、民主的に否決されるようなものばかりなのだ。極論を言えば、財政再建を行うには民主制度を捨てなくてはならない、ということになる。

もちろん、財政再建を行うために独裁制をとるのは本末顚倒なので、こうした(主に高齢者層への)不利益を緩和させ、なんとか民主的に年金・医療・福祉の低下を実現していかなくてはならない。その手法は私にも見当が付かないが、基本的には社会保障制度の簡素化と、公平さの実現であろう。

「公平さ」、これがこれからの日本社会を作っていく上でのキーワードだと私は思う。

目先の年金・医療・福祉よりも、子ども世代・孫世代まで含めた公平さを選択する人は、今はそんなに多くないかもしれない。でも少なからずそういう人はいる。そういう人に向けたメッセージを発する政党が、少しはあってもいいと思うのだ。

(つづく)

※冒頭画像はこちらからお借りしました。
By Emmanuel Huybrechts from Laval, Canada (Golden Lady Justice, Bruges, Belgium) [CC BY 2.0 (http://creativecommons.org/licenses/by/2.0)], via Wikimedia Commons

4 件のコメント:

  1. ハシグチイチロウ2016年7月2日 3:37

    窪さん、こんばんは(^O^)/私も全く同感です。最近の政府与党の独裁的政治手法には、眉をひそめている一人です。今回の野党共闘は野合という見方もあるかもしれないですが、当面の大きな問題点である憲法改正を阻止するには、こうした手段をとらないといけない現野党勢力の今までになかった努力!という点を評価したいと思っています。政治は難しすぎて、大変ですが、やはり、私達一人一人が、政治に関心を持ち、意見を述べるという事が大切であろうと思います。窪さんみたいな方が、こうして投稿していただけると大変ありがたく思います。

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    1. イチロウさんありがとうございます! 本当に「意見を述べる」が大事だと思います。私の書いたことも、見る人が見れば素っ頓狂な部分もあるかもしれませんが、よくわからなくてもとりあず文句を言う、ということが政治(のみならずいろいろなことを)変えていくのかな、と。もちろん文句を言う分だけ責任も生じますけどね!

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  2. 今の自公政権は内部の異論を許さないファッショ的な政権だと思います。それは、選挙の際に公認をするかどうかで、異論を挟むものを直接排除してきたので、だれも異論が挟めないからです。
    そして、その政権が憲法を危険な方に改正(改悪)して、現行憲法のもので70年続いた9条を柱とする妥協の産物としての現況を一気に変えようとしているので、これを止める必要があります。
    財政再建の細部に入る前に、現下の不公正極まりない課税のあり方を見直すことが必要です。要するに大企業、高額所得者が、タックスヘイブンを含めた国際的な資金の移動や、さまざまの特別措置法などの恩恵で、本来負担するべき税金から大幅にかけはなれたわずかの税金しか負担していません。これを放置したまま、財政債権をしようとすると、消費税のさらなる増税ということになり、国民の生活を苦しくするばかりか、経済全般の低迷を招くでしょう。
    要するに、もっと公正、公平な世の中にするために、声をあげるべきだと思います。

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    1. shigeさん

      課税については、まさに次回に書こうと思っていたことを先を越されて書かれてしまいましたね。仰る通りだと思います!

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